法令
環境基本法
環境基本法は日本の環境政策の根幹を定める基本法です。
環境基本法の目的
- 環境の恵沢の享受と継承など
- 環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築など
- 国際的協調による地球環境保全の積極的推進
環境基本法の内容
環境基本法では、環境の保全に関する基本的施策として「環境基本計画」を策定しています。また、「大気、騒音、水質、土壌、ダイオキシン類に関する環境基準」などを設け、具体的な施策を策定しています。
水質に関する環境基準は「水質汚濁に関わる環境基準」として設定され、大きく二つの項目「人の健康の保護に関する基準(健康項目)」と「生活環境の保全に関する基準(生活環境項目)」があります。
水質汚濁防止法
1970年の公害国会で、旧水質二法に変わって制定された法律で、制定以来、必要に応じて改正されています。
>水質汚濁防止法の目的(第1条より)
- 公共用水域及び地下水の水質の汚濁の防止
- 国民健康の保護、生活環境の保全
- 健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任
水質汚濁防止法の内容
水質汚濁防止法では、特定事業場(有害物質や有機汚濁物質を含む汚水または廃液の発生する特定施設を設置している工場や事業場のこと)から排出される水を、環境基本法の環境基準に定められている「健康項目」と「生活環境項目」について、全国一律排水基準以下にすること義務付けています。
排水基準は状況によって改正され、近年では平成18年には亜鉛、平成24年には1,4ジオキサンが追加されています。
- すべての特定事業場
健康項目(27項目)が適用されます。基準値の多くは環境基準の10倍となっており、公共用水域に放流された後、10倍程度の希釈されることを想定しています。 - 1日の平均的な排水量が50m3以上の特定事業場
生活環境項目(15項目)が適用されます。
下水道法
下水道法は、旧来の下水道法(1900年制定)に代わり、1958年に新たに制定されました。
下水道法の目的(第1章より)
- 下水道(流域下水道・公共下水道・都市下水路)の整備を行う
- 都市の健全な発達、公衆衛生の向上及び公共用水域の水質保全を図る
下水道法の内容
下水道法では、公共下水道などに下水を排出する工場、事業場の水質規制を定めています(水質汚濁防止法では終末処理場の規定のみで、これら工場や事業場への規制はありません)。
公共下水道を使用する下記の事業場は、この法律の適用を受けます。
- 50m3/日以上の汚水を排出する事業場
- 政令で定める水質の下水を排出する事業場
- 水質汚濁防止法における特定施設を設置している事業場
そして、公共下水道を使用する事業場は、以下が義務付けられています。
- 使用の開始、水量、水質の変更の届出
- 特定施設についての届出
- 除害施設の設置
- 測定及び記録
- 排水基準の遵守(全国一律の基準、都道府県の条例による上乗せ基準)
- 事故時の届出
化学物質審査規制法
1960年代頃から問題となったPCBのように、製品などに使用された化学物質が通常の使用で環境を汚染し、人の健康を「じわじわ」と蝕んでいくという事態は、従来の化学物質対策の盲点を突くものでした。 このような状況の下、化学物質審査規制法は昭和48年(1973年)に制定されました。
化学物質審査規制法の目的(第1章より)
- 難分離性物質による環境汚染を阻止し、人の健康障害を防止する
- 都市の健全な発達、公衆衛生の向上及び公共用水域の水質保全を図る
化学物質審査規制法の内容
化審法は大きく分けて以下の2つの部分からなっています。
①新規化学物質に関する審査及び規制(新規化学物質の事前審査制度)
- 新規化学物質を製造、輸入しようとする際に経済産業省に届け出を行い、化審法番号の付与を受ける
- 化審査法番号を付与された化学物質は既存化学物質名簿に記載され、国内で使用可能な化学物質として登録される
②化学物質の性状などに応じた規制
- 第一種特定化学物質、第二種特定化学物質に関する規制
- 第一種監視化学物質、第二種監視化学物質、第三種監視化学物質に関する措置
第一種特定化学物質 (PCBなど16物質) |
難分解性、高蓄積性及び長期毒性又は高次捕食動物への慢性毒性を有する化学物質 | ・製造・輸入の許可(事実上禁止) ・特定の用途以外での使用の禁止 ・政令指定製品の輸入禁止 ・回収など措置命令(物質・製品の指定時、法令違反時) |
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第二種特定化学物質 (トリクロロエチレンなど23物質) |
難分解性であり、長期毒性又は生活環境動植物への慢性毒性を有する化学物質 | ・製造・輸入の予定/実績数量、用途などの届出 ・リスクの観点から必要に応じて、製造・輸入予定数量などの変更命令 ・取扱いに係る技術上の指針の公表・勧告 ・表示の義務・遵守勧告 |
第一種監視化学物質 (シクロドデカンなど35物質) |
難分解性を有しかつ高蓄積性があると判明した既存化学物質 | ・製造・輸入実績数量、用途などの届出 ・合計1トン以上について物質の名称、届出数量の公表 ・指導・助言(環境汚染防止のため必要な場合) ・リスクの観点から必要に応じて有害性(人又は高次捕食動物への長期毒性)調査の指示 |
第二種監視化学物質 (クロロホルムなど876物質) |
高蓄積性は有さないが、難分解性であり、長期毒性の疑いのある化学物質 | ・製造・輸入実績数量、用途などの届出 ・合計100トン以上について物質の名称、届出数量の公表 ・リスクの観点から必要に応じて有害性(人への長期毒性) 調査の指示 |
第三種監視化学物質 (ノニルフェノールなど61物質) |
難分解性があり、動植物一般への毒性(生態毒性)の有る化学物質 | ・製造・輸入実績数量、用途などの届出 ・合計100トン以上について物質の名称、届出数量の公表 ・リスクの観点から必要に応じて有害性(生活環境動植物への慢性毒性)調査の指示 |
化学物質排出把握管理促進法
化学物質排出把握管理促進法は、化学物質の環境リスクを、行政だけでなく事業者や市民など社会全体で低減させるために、1992年地球サミットで採択された「アジェンダ21」や1996年のOECD勧告を受けて制定されました。
化学物質排出把握管理促進法の目的(総則より)
- 事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進する
- 環境の保全上の支障を未然に防止する
化学物質排出把握管理促進法の内容
化学物質排出把握管理促進法は、「PRTR制度」と「MSDS制度」の2つに分けられます。
① 第2章 第一種指定化学物質の排出量などの把握など(PRTR制度)
化学物質の環境への排出量、廃棄物に含まれて事業所外に移動する量(移動量)を、 事業者の報告や推計に基づいて行政庁が把握し、集計し、公表する制度 |
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事業者は自社の化学物質の排出量などを把握し、国が集計し公表する排出量データなどとの比較から、自社排出量が国内、地域内、業界内で占める割合などを確認することができるようになり、管理活動の必要性や進捗状況が明らかになります。 | |
対象化学物質 | ・ 第一種指定化学物質(354 物質:そのうち発がん性がある12物質は特に「特定第一種指定化学物質」として指定) ・ 第一種指定化学物質を1質量%(特定第一種は0.1質量%)以上含有する製品(化学薬品、染料、塗料、溶剤など) |
対象事業者 | ・ 対象業種として政令で指定している23種類の業種に属する事業を営んでいる事業者 ・ 常時使用する従業員の数が21人以上の事業者 ・ 第一種指定化学物質の年間取扱量が1トン(特定第一種指定化学物質は0.5トン)以上の事業所を有する事業者など、または特別要件施設を設置している事業者 |
② 第3章 指定化学物質など取扱事業者による情報の提供など(MSDS制度)
対象化学物質又は対象化学物質を含有する製品を他の事業者に譲渡又は提供する際に、 その化学物質の性状及び取扱いに関する情報(化学物質など安全データシート:MSDS)を 事前に提供する制度 |
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事業者は、 MSDS の交付を受け、化学物質の性状や取扱いについての知識を高めることができます。 | |
対象化学物質 | ・「第一種指定化学物質」( 354 物質)及び「第二種指定化学物質」( 81 物質)の計 435 物質が対象。 ・第一種及び第二種指定化学物質を1質量%(特定第一種は 0.1 質量%)以上含有する製品(化学薬品、染料、塗料、溶剤など) |
対象事業者 | ・対象化学物質又は対象製品について他の事業者に譲渡又は提供するすべての事業者 |